はじめに


二〇〇四年九月から、僕は一人バックパックを背負いヨーロッパを放浪する。
終着点なんてものは設けず、ただひたすらフラフラする文字通りの放浪だ。
そもそものきっかけは、ドイツに中世から伝わる放浪職人の制度『ヴァルツ』の存在を知り、
自らに靴職人としての技術を身に付けさせる為に科した、一見無謀な計画のはずだった。


しかし、実際に旅の準備を開始してから

─世界各地で生活する人々のエネルギーを肌で感じてみたい─
─ヨーロッパの国々に対し、知らぬ間に植え付けられた僕の勝手なイメージは、果たして本当なのか?─
─ただ職を求めて放浪するだけではなく、この旅の間にこんな馬鹿げた計画を並行していったら、もっともっと面白いことになっていくんじゃないのか?─

そんな好奇心や猜疑心、そして無益な冒険心という名の渇望を、容易にすっぽりと覆い隠すほどの出来る確固たる理由なんて、僕にはもう見出すことは出来なかった。

行動の基本姿勢としては、ひたすらアナログな旅にしようと思っている。「サブノートパソコンとデジカメを持って、何がアナログだ」と言われるかもしれないけれど、『行動』の基本姿勢がアナログなだけで、『所持品』は至ってデジタルなのだ。
つまり、移動手段は徒歩。睡眠は主にキャンプ。意思の疎通は身振りと手振り。そんな旅にしようと思っている。

僕が旅先で出会った人々、出会った風景、出会った出来事。
そんなものを少しずつ皆さんにお届けします。

では、冒険のはじまりー。はじまりー。

 



1979年生まれ。国内放浪の後、
22歳のときに地元の靴職人の下で1年間見習いとして働く。
その後、ドイツの製靴学校入学を目指すも、あえなく断念。
2004年9月より、ヨーロッパの職人の工房を巡る、
3年間の放浪生活「ヴァルツ」をスタートする。