【まえがきページ】

宇宙への思い〜まえがきにかえて

 大学1年の春休み、私は米国フロリダ州のNASA(アメリカ航空宇宙局)ケネディ宇宙センターにきていた。スペースシャトルの打ち上げを見るために、生まれて初めて海外へやってきたのだ。
 打ち上げの前夜、打ち上げ場でライトアップされたシャトルが公開された。目の前にそびえる高さ56メートルの機体は15階建てのビルの高さに相当する。  間近に見上げる世界初の有翼宇宙往還機。私はその美しさに圧倒され涙がこぼれそうになった。シャトルの白く滑らかな姿態はまるで「白い鳥」のようだ。それは装飾品でも芸術作品でもなく、人を宇宙へ輸送する乗り物である。宇宙工学の粋を集結するとこんなにも美しい姿になるなんて。
 打ち上げの朝がやってきた。大きな電光掲示板にカウントダウンが表示され、打ち上げの瞬間が静かにおとずれる。爆音に気づいたのは数秒後だった。身体をビリビリと震わせる轟音。メインエンジンから放たれる閃光のようなまばゆい炎。にょきにょきと雲のように噴出する白煙。白い鳥はフロリダの大地を飛び立ち、大西洋の風を受け、雲の中へ吸い込まれていった。白い鳥が飛び去った後には地上から雲の中へとそびえる噴煙だけが残っていた。それはまるで天へ昇る階段のようだった。私はなぜか子どもの頃にかえったような幸福な気持ちになり、いつまでもその光景を見上げていた。
 21世紀の今、人類は地上から宇宙へ、その生活領域を拡大しようとしている。スペースシャトル、国際宇宙ステーション計画の次には、ふたたび月へ有人飛行し、月面基地を拠点に火星へと進出していくだろう。今世紀中に人類はどこまでたどり着くのだろうか。ハッブル宇宙望遠鏡や惑星探査など新しい技術や観測で、宇宙の謎がどんどん解明されつつある。宇宙を科学者だけのものにしておくのはもったいない。今を生きるすべての人々にとって、宇宙を知ることは心がわくわくする最高に楽しいことに違いない。
 宇宙の予備知識がまったくない人にも宇宙の神秘、宇宙の不思議さ、宇宙の面白さを感じてもらい、人類の宇宙への営みをともに味わってもらおうと思ってこの本を書いた。内容も宇宙とは特に縁のない一般の人々からの素朴な質問に対する回答をもとに構成している。  夜空にきらめく星を見ていると、思いは果てしなく宇宙へ広がっていく。あなたの見ている星の光は200万年前に放たれた光かもしれない。宇宙の大きさに比べたら人間はなんてちっぽけなんだろう。
 でもそんなちっぽけな人間が地球周回軌道上に宇宙ステーションを建設し、その中で今日も人間が生活している。地上から見上げると、星のように輝く宇宙ステーションを見ることができる。忙しい日常生活に追われ、空を見上げることなど忘れてしまいそうになるが、そんなときこそ手を休めて星空を見上げ、心を宇宙へと解き放とう。過去から現在、そして未来へ。果てしない空間と時間。進みゆく人類の宇宙へのあゆみについていっしょに思いめぐらせたい。
 スペースシャトルが若き日の私の心を躍らせ宇宙へといざなったように、この本がみなさんの想像や発想を宇宙へと押し広げ、宇宙の大航海時代へ乗り出していく地球人の一員としての興奮を分かち、楽しんでくれることを願っている。

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