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ミニマリズムは必須のスキル 「所有」がレアになる未来/ミニマリストしぶ

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ミニマリズムの視点で生きる力は、これからの時代に必須のスキル。4畳半の部屋に家賃2万円で住み、食事や服も最小限で暮らすミニマリストしぶが、実践中のミニマル&シンプルライフを赤裸々に紹介します。

「職業:ミニマリスト」になるきっかけ

ミニマリストとの出会い

僕は今、4畳半のワンルームに暮らしています。物が少ないので、狭い部屋で満足できるようになりました。けれども、ずっと物が少ない暮らしをしていたかというとそうではありません。元は裕福な家庭でしたが両親が自己破産して離婚したのをきっかけに、広い家はだんだんゴミ屋敷になりました。

その後は母の実家に暮らしつつ、浪人生を2年間した後フリーターになりました。このまま実家暮らしは嫌だなと思うようになりましたが、当時バイトの稼ぎは月十数万。一人暮らしをしてもあまり楽しい生活ができそうにありませんでした。

一人暮らしを始めるときに、何にお金が掛かるかというと初期費用です。敷金・礼金は引っ越しには誰でも掛かりますが、さらに家具家電をそろえるのに何十万も必要です。この部分は減らせるのではないかと考えました。

そこでネットで「冷蔵庫 なし」と調べてみたところ、冷蔵庫を持たずに暮らす人のブログを見つけました。部屋にはバランスボールと寝袋しかありませんでした。押し入れを机にしていて、持ち物はすべてバックパックに収まる状態。その方は「ミニマリスト」を名乗りそういう生活をしていました。冷蔵庫も洗濯機もなく、生活費が掛からない。何より感心したのは、バックパックに荷物が収まるから半年に一度海外に行っていたことでした。

その後、ミニマリストという言葉は2015年に流行語大賞にノミネートされますが、その1年前の2014年のことです。この暮らし方は格好いいな、とミニマリストに強烈に惹かれました。これが、ミニマリストになるきっかけになりました。

ミニマリストの第一歩

両親の離婚後住んでいた母の実家に僕自身の部屋はなく、物置きみたいなところを無理矢理自分の部屋にしていました。僕がミニマリストになった当初、一人暮らしをする前はこの部屋の物を減らすことから始めました。そして、節約に成功し念願の一人暮らしがかなったときの部屋は、ブログでも紹介しています。ミニマリストの部屋として雑誌にも掲載されました。突き詰めていくと生活に必要な物はそう多くないと気付かされました。

一人暮らしを始めた当初の部屋にあった物は、ご飯を食べたり仕事をするためのデスクと、寝るためのマットレス。あとは、炊飯器とヘアドライヤーぐらいです。洗濯機と冷蔵庫、電子レンジやテレビはありませんでした。でも、これで生きていけると思いました。

街に出れば、コインランドリーやコンビニエンスストアなど自分で持っていなくても替わりになるものがありました。わざわざ自分で所有しなくてもいいと気付けたのが、一人暮らしを始められた要因のひとつだと思います。

ミニマリストになっていちばんの変化

ミニマリストになっていちばん大きな変化は、キャリーケースひとつで旅をしながら暮らすようになったことです。物を減らしたので、身軽に移動ができます。その時々で自分の好きな場所に住めるのではないかと思えるようになりました。

僕はブログで生計も立てるようになっていて仕事場所を選ばなくなったので、このタイミングで旅をしながら暮らしてみることにしました。1カ月や短期で泊まれるシェアハウスやゲストハウスを利用するのです。あとは、単純にホテルを利用したりと、その場で旅行する感覚で移動しながら暮らすことにしました。

キャリーケースひとつに、どんな物を詰めていたのか。数えてみると物は94個ありました。そのほとんど、キャリーケースの半分は服で、残り半分に仕事道具と、薬。人間生きて行くのに必要な物はそう多くないのだと気付かされたのが移動しながら暮らしてわかったことです。

僕は今、この旅をしながら暮らすことを既に止めています。3カ月前に福岡に引っ越しました。最初はいろんな場所に行けて、見たことがない物が見られてとても充実していました。けれど、旅をするときには、行く前に予定を立てたりホテルを予約したり交通手段を調べたりとエネルギーを使います。この旅のタスクが日常のタスクとごちゃ混ぜになってしまって、結局どっち付かずの状態になり疲れたので、半年ぐらいで止めてしまいました。

ミニマリストしぶの物の選び方

時間の質を向上させる物

ミニマリストになった当初と現在では、少し持ち物が変わっています。3カ月前に旅をしながら暮らすことを止めて部屋を借りましたが、入居したその日に購入したのが、洗濯乾燥機と自動掃除ロボットでした。洗濯乾燥機は13万円ぐらいするので買うときに躊躇しましたが、洗濯の時間が短縮されました。洗濯乾燥機がないときはコインランドリーを使っていたのですが、1回500円ぐらいでした。この費用もなくなりました。

そして、洗濯乾燥機を買ってから、お湯で洗うようになりました。調べてみたら、アメリカでは温水洗いはメジャーだそうです。洗濯乾燥機を買うことで、洗剤も買わなくなったし、コインランドリー費用も掛からないし、洗濯の時間も短縮できたので、13万円払ったけれど長い目でみたら回収できるなと思いました。
僕が物を選ぶ基準は、今は完全に「時間」です。物を選ぶことで、自分の時間がどう変化するか。時間の質を向上させる物だけを買うようにしています。

出口が見える物

出口が見える物を買っています。例えば、毎年iPhoneは新作が出るたびに発売日に買い替えています。なぜかというと、単純に好きということもありますが、アップル製品は1年間使ってもメルカリで定価の6~7割で売れるからです。毎年買い替えているとお金を持っていると思われるのですが、決してそうではなくて下取りに出せば定価の3割ぐらいで買えるのです。
バッテリーの劣化もないので、トータルでみるとそんなにお金が掛かっていません。いい出口というのは、売れるとか、人に渡せるとか、処分しないで済むことです。悪い出口は、捨てることです。物を買うときに、これは売れるのかとか、人に渡せる物なのかをよく考えています。

人生は積み減らし

足すことを躊躇しないようにしています。ミニマリストになると、減らすことに注力してしまいがちです。物の数の少ない人が強いという価値観になりがちなのですが、それでは本末転倒です。

好きな言葉のひとつに「人生は積み減らし」という岡本太郎さんの言葉があります。ミニマリストの生き方はまさにこれだなと思います。限界まで減らして持たないことを維持するのではなく、増やしたり減らしたりしながら必要最低限を維持していくのが理想的です。減らすために生きているわけではないので、いろんなことを経験しつつ、経験した上で必要な物を残していくのが大事です。

ミニマリストしぶのこだわり

毎日同じ服を着ています

物を減らしていくと、嫌でも個性が出ます。たとえば、僕は毎日同じ服を着ています。コートも同じ物を2着、服も同じ物を4着、靴も同じ物を3足持っています。なぜかというと、単純にコーディネートを考えるのが得意ではないからです。毎朝、今日は何を着ようかと朝起きてすぐ考えることに脳のエネルギーを使うのが嫌なので私服を制服化しています

床で寝ています

僕は床で寝ています、というと大抵驚かれます。床で、毛布にくるまって寝ています。半年の旅暮らしを経て福岡で暮らし始めたときに、少しずつ物を増やしていこうと決めました。マットレスをどうしようと考えたときに、以前コンクリートと高級マットレスとで寝たときの睡眠の質が変わらないという研究データを見たことがあったので試してみることにしました。3カ月ほど続いています。

これからずっと続けるかはわかりませんが、世の中必要とされている物が必要ないということもあると気づけたことが大きな収穫でした。ですが、僕はその場その場で結構持ち物を変えています。彼女がいたときは、気を遣って極厚のマットレスを2重にしたりしていました。床で寝たり、薄いマットレスで寝たり、臨機応変にやっています。

「キャッシュレス生活」をしています

現金を使わないキャッシュレス生活をしています。ブログでも、現金より電子マネーやクレジットカードで払う方がいいという話をよく紹介しています。支払いはだいたい携帯電話で済ませています。東京に来てから5日間ぐらい経ちますが、現金は友達と行った飲食店で1回しか使っていません。

キャッシュレス生活をしつつも財布は一応持っています。マネークリップと鍵、身分証明書が入った小銭入れです。旅をしながら暮らしているときにこの財布を一度紛失して、とても困りました。物をたくさん身に付けていると、それだけリスクになるのです。ミニマリストになった当初は家の中にある家具などにばかり目を向けていましたが、お金や身に付ける物ひとつとってもよく考えるようになりました。

ミニマリストしぶのお金の使い方

ミニマム・ライフコストを知る

僕は、月額6~7万円で生活しています。結局、何で節約するかというと家賃など固定費を抑えることがいちばんです。食費や電気代などの変動費は節約しようと我慢するとストレスになってしまいます。だから、できるだけしないほうがいいです。ミニマリストになるメリットは固定費が抑えられること。スマホ代は格安SIMにして安くなりました。インターネットも固定回線ではなくてモバイルWiFiにすると、引っ越しのたびに解約金なども掛かりません。固定回線は速いけれど、多くの人はモバイルWiFiで済むのではないでしょうか。このように、固定費の必要最低限も見直せるようになります。
この月額の内訳はミニマム・ライフコストと言われます。これは自分が1カ月生きるために必要な金額を表現しています。『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』の著者・四角大輔さんが提唱している考え方です。
自分が毎月いくら稼げば生きて行けるのか把握している人は少ないです。僕は月7万円あれば大丈夫ですと即答できるのですが、即答できる人は案外少ないです。フリーターを辞めてこの仕事を始める頃、バイト以外の収入が月に13万円程しかありませんでした。その状態で辞めてかつかつだったのですが、7万稼げれば死なないな、と強気に思えました。固定費を定期的に見直すことをおすすめしています。

絶対に見栄にお金を使わない

物が多い人は大抵、見栄を張っています。自分にとって必要最低限の物で暮らすということは、見栄を捨てることと同義です。周りからチヤホヤされることが幸せな人は、幸せの基準が他人にあります。見栄にお金を使い始めるときりがありません。ですから、見栄にお金を使わないことを意識しています。

では、僕はどんなことにお金を使っているのかというと知識とか、体験、人です。物にお金を使っても、買った瞬間は嬉しいけれど幸せは長続きしません。けれど本を読んだり、旅行をしたり、人にご馳走したりという経験にお金を使うと一生物なので幸福度が高く幸せが長続きします。

物を捨てた後のステージ

ミニマリストの本質とは

多くの人の抱くミニマリストのイメージは「物を持たない人」だと思います。もう少し深く掘り下げると、ミニマリストとは、ミニマリズムを信じている人

では、このミニマリズムとは何か。もともと、ミニマリズムは美術の分野で発達した概念です。このミニマルアートからの発展で、わかりやすい例にアップル製品があります。アップルマークを強調するために、他のデザインをできる限り削ぎ落としています。ミニマリズムの本質は強調なのです。何か1点を目立たせるために、他を削ぎ落とすということです。

ミニマリストとは、ただ物を減らすだけでは意味がなくて、例えば僕であれば一人暮らしをしたいとか、すっきりした部屋で暮らしたいとか、旅をしながら暮らしたいとか、何か目標に向かって物を捨てたり増やしたりするのが重要だと思います。

消費ではなく生産で幸せを感じる体質に

物を減らすためにどうしたらいいかとよく聞かれますが、そもそもなぜ物を買うのを止められないのかというと、消費することに幸せを感じる体質になっているからです。その体質のまま物を減らし続けても、いつかまた物は増えてしまいます。リバウンドを防ぐために何が必要かというと、消費ではなく生産で幸せを感じるようにならないといけません。

僕はミニマリストについてブログで発信したり、ツイッターでつぶやいたりしています。自分を表現するために生産活動をする。そういったことに幸せを感じるようになって、仕事で疲れたり、ストレスが溜まったときに、ブログや動画、写真などの表現で発散できるようになると物が増えません。

ミニマリストの未来

「流動性」が上がって「所有」がレアに

ミニマリストがなぜこんなに増えているのかというと、テクノロジーの発達が大きいと思います。何といっても、スマホの登場です。本も読めるし、写真も撮れるし、電話もできるし、ネットもできるし、お金も払える。テクノロジーの発達とミニマリストは紙一重です。ですからミニマリストの未来を語るうえで、今後新しいサービスにも注目したいと思っています。

SFアニメで『アクセル・ワールド』というのがあります。登場人物はスマホすら持っていません。首回りに端末をつけていて、インターネットと脳が通信でき空間上のパソコンを操るような話です。総務省でも、この技術に似たネットワークの実現が遠くない未来に予測されたりしています。時代とともにテクノロジーが進むと、物を所有しなくてもよい方向に向かっていくのです。

ミニマリズムは必須スキル

今の時代、物を減らすだけでなぜ価値が生まれるのか。ミニマリストや物を持たないことに興味を持つ人が増えているのはなぜでしょうか。時代が進み豊かになって、服や食事、趣味や娯楽も格段に選択肢が増えました。選択肢が増えることは悪いことではありません。人間はそれぞれ趣向が違うから、必要だとわかって選ぶことができたら幸せに生きられます。

けれども、自分が何を持てば幸せなのかわからなくなって迷子になっているのが現代だと思います。なぜ迷うのかというと、選ぶ力がないからです。これを選べば自分が幸せになれると知るには、選ぶ訓練をするしかありません。

そこで、ミニマリズムの視点で物を減らすのはいい訓練になります。普通に暮らしていたら毎日物は増える一方です。意識しないと減らす方向にならない。どういう空間にいたら幸せなのか。どういう人と過ごしたら幸せなのか。選択肢のあふれるこの時代、ミニマリズムは必須のスキルになっていくといえるのではないでしょうか。

 

(画像提供:iStock.com/runna10)

ミニマリストしぶ(澁谷直人)


“Minimalist”代表。福岡県出身の22歳。
「ミニマリストしぶのブログ」は月間100万PV超える人気ブログで、テレビや雑誌などのメディア出演も多数。

▼メディア出演歴
「CHINTAI 首都圏版」
「西日本新聞メディアラボ mymo」
「FBS福岡放送 めんたいワイド」他

 

 



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