星の王子さま バンドデシネ版 公式ホームページ

 


なぜ「星の王子さま」は子どもだったか?
たぶん戦争中でサンテックスは絶望していて、もう自分たちの世代はダメだ(と思った)。あのときの戦争について、『人間の土地』の最後で彼は「虐殺されたモーツアルト」と言っていますね。子どもたちを沢山殺している。その中には、沢山のモーツアルトがいる。そういうものを全部失ってしまう!と。
だからやっぱり、子どもに託すしかないと思っている。
この『星の王子さま』という本は、友だちに捧げてあります。友だちのレオン・ウェルトはユダヤ人で、あの頃は収容所に入っていたのかな。そこで、いちばん最初に「この本を大人に捧げるのを許してほしい」と言い訳がありますね、文末に改めて「子どもの頃のレオン・ウェルトに」とある。そういう子どもに対しての想いが沢山あって、メッセージは子どもに対して発せられなければならない、とサンテグジュペリは考えていた。それが『星の王子さま』なんですね。
だから、あのバオバブの所の話でね。
「バオバブに気をつけないと大変なんだ。そうしないと星が壊れちゃう。そのことを地球の子どもたちに僕は大きな声で伝えなくてはいけない」
それで、コミックの方はというと、特別大きな字で
「子どもたちよ!バオバブにご用心!」って2度も3度も言ってるんですよね。
今なら「子どもたちよ、原発にご用心!」と言いますか。
バオバブで何を気をつけないといけないかというと、いつも見張っていて芽が出てきたらすぐに抜かなくてはいけない。地震や津波のように放っておくと襲ってくる災害じゃないんですよ、バオバブは。
農民的な考え方で言うと、よくない植物であって、見つけた途端にそれは潰していかなくてはいけない。ひょっとしたら、この時期サンテグジュペリの頭の中ではバオバブはナチス・ドイツと重なっていたのかもしれない。うかつに放っておいたばっかりに星が壊れそうになった。
でも、それをはっきり言わない。僕はこれは随分踏み込んだ解釈をしていて、そんなふうに言ってしまうと、つまんなくなってしまうかもしれない。だけど日々戦ってる本人からしたら、そういうものが頭のどこかにあったのかもしれませんね。しかも、彼は政治的立場も非常に微妙で、ドゴールがロンドンに作っていた亡命政府があったんだけど、そことの仲もさほど良くなかったし、ああいうときは、派閥ができたりして面倒なことになるんですけど。そういう中で随分自分の心の問題を抱え込んでいたのだと思います。
だから、バオバブにご用心。ナチズムあるいはイデオロギー、怪しい思想にご用心と、言いたかったのかなあと思ったりしますけど。

 

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