駅の券売機が
「ありがとうございました」
と言ってくれる。
もちろん機械だから心はこもっていない。
でもじゃあそもそも人と機械との「ありがとうございました」の違いってどこにあるんだろう。
ぼくが学生時代、飲食店でアルバイトしていたときのありがとうございましたは、
ほとんど「レジに人がいく」「テーブルが空く」の合図だった。
多少の感謝の気持ちはあれ、お店が忙しくなれば本当にただそう発声しているだけ。入り口のセンサーと大差なかった。
じゃあ、
本当にお客さんに感謝したいとき券売機との違いを出すにはどうしたらいいのかというと、お店だったらお客さんの姿が見えなくなるまで見送るとか、通販のお客さんにわざわざ手書きで添えるとか、サプライズでこっそりおまけをつけてあげるとか、感謝の表明はいろいろやり方があるのかもしれないが、券売機に勝つためには結局、「習慣」になることに抵抗して、「ただ、本当にそう思うこと」なんじゃないかと、チカチカ光る券売機を見ながら思った。
出版の世界では、「読者の皆様」とか「◯万部突破」とか「◯千人の9割」など大きな単位で語られることが多いものの、お客さんはいつだって一人ずつ。
この1冊をあなたに買ってもらえてうれしいです、読んで共感してくれるなんて最高です、という気持ちを忘れないようにしたい。
少なくともたった今は、本当にそう思ってる。
編集部 橋本圭右