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会議が苦手でも、仕事が遅くても大丈夫。内向型が輝く働き方/堤ゆかり

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「会議で発言できない」「社内で人間関係をうまく築けない」「電話の音が気になって集中できない」…そんなあなたはもしかしたら「内向型」かもしれません。自身も仕事で悩んだ経験のある内向型コンサルタントが説く、内向型をいかす働き方とは?

内向型は武器になる!

内向型とはどんなタイプ?

内向型とは、心理学者のカール・ユングが提唱した概念。もともとは「興味関心のベクトルが自分の内側にある=内向型」「興味関心のベクトルが自分の外側にある=外向型」という性格分類として捉えられていましたが、実は先天性のものであり、脳や神経に違いがあることが明らかになりました。生まれ持ったクセのようなものです。

内向型を一言でいうと「刺激に高反応を示す人」。特徴としては次の4つです。

※内向型診断テスト
https://naikougata.jp/naikougata-test

内向型の人の割合は2〜5割とされていますが、誰でも内向性と外向性を持ち合わせています。育った環境の中で比率が変わっていくケースもあります。私も大学時代はいつも飲みに出歩いていて、今では考えられないですが外向型に寄っていた時期もありました。

内向型が仕事で悩む理由

DODAエージェントサービスが3000社の求人を検証した結果によると、中途採用の人材に求めるものの第3位が「外向性」(59%)。ちなみに2位は「柔軟性」、1位は「積極性」だそうです。

内向型が組織の中で悩んでしまう要因は、「みんなで仲良くやろう」「積極的に発言しよう」「即断即決しよう」といった外向性優位の社会で生きているから。会議で発言できないことが評価に響いたり、まわりのノリやスピードについていけなかったり、電話や人の声が気になって集中できなかったりするため、内向型=直すべき欠点のように感じてしまい、組織で自分の力を発揮することが難しくなってしまうのです。

ただ、組織で働くことが絶対ダメというわけではありません。
・外向的になろうと努力する
・内向型だと自己開示する
・外向的になれるような好きなことに取り組む
・内向型をいかす工夫をする
といった解決策でうまくいく場合もあります。

内向型をいかして働く3つの要件

私が考える要件とは、「①外向型と張り合わないこと」「②内向型の強みをいかしている自覚があること」「③主体的選択をしていること」。

①「外向型と張り合わないこと」は、外向型と自分を比べてもいいけれど、優劣はつけず、勝とうとしないということ。無理して変わろうとしない。いきなりポジティブに捉えるのは難しいですが、まずは「内向型も悪くないな」くらいに思えればいいですよね。

私が内向型であることを知ったのは2016年の終わり。あるブログで紹介されていた『内向型を強みにする』という本がきっかけでした。でもそれから1年半くらいは受け入れられず、ずっと劣等感を感じていました。

受け入れられるようになったのは、自分の過去ととことん向き合ってから。学生時代に女友達になじめなかったり、会議で意見を言えずにまわりと差がついてしまったり。すべての根源は私が内向型であるがゆえと思っていましたが、反対に、成功した出来事もまた内向型だからこそだったと気づいたのです。

たとえば、口下手ですぐにレスポンスはできないけれど、じっくり考えて話すからこそ友達に「ゆかりちゃんが話す言葉は信頼できる」と言ってもらえたり、相手の思いに寄り添って話を聞く姿勢を仕事のお客さまから感謝されたり。それに気づいてからは徐々にプラスに考えられるようになりました。

②「内向型の強みをいかしている自覚があること」は、強みを知っているだけでは足りません。仕事の中で強みをいかせていると実感できていることが大事です。

私はこれまで2回転職をしたのち、フリーランスになりました。会社員時代は「自分には合わない」「私の天職はどこにあるんだろう」と思っていましたが、今振り返ると自分らしさをいかせていた部分もあると感じます。

ウェディング業界で式場を紹介する営業職をしていた時期がありました。しかし、多忙な中で要領よく仕事ができない自分がすごく嫌で、体を壊してしまい辞めざるを得ませんでした。でも、結婚式はお金の問題や親御さんの意向などがあってすぐには決断できないもの。その点、粘り強くお客さまのお話を聞き、相手の立場に立って先走らずに的確な提案をすることができたので、私の強みをいかせていた部分も多かった。お客さまから「とても素敵なお仕事をされていますね」と言っていただいたこともありました。当時そのことに気づけていたら、もっと仕事を続けられたかもしれません。

③「主体的選択をしていること」は、消去法ではない意思決定ができているか。「内向型だからこれしかできない」「こうあるべきだ」ではなく、「内向型だからこそこういう働き方をする!」という選択ができていることが大切です。

内向型をいかす働き方を叶える5ステップ

自分の名前で仕事できる人になる!

「キャリアプラン」は、雇用形態や仕事内容など。それを考えたあと、もしくは同時並行で、「自分の内向型としての強み」を理解していきます。

次の「お試し」はとても重要。キャリアプランが自分に合っているかは試してみないとわからないので、1回で正解を見つける必要はありません。たとえば文章を書くことが好きなら、小さいブログを立ち上げて記事を1本書いてみる。そこから、それを仕事としてやりたいかどうかを見極めていきます。

内向型には「考える力」がありますが、考えすぎてなにもできなかったり、いつも最悪の事態を考えてしまったりと、その力をネガティブに使っている場合が多いです。未来に向けて建設的に客観的に考えていく力を鍛え、行動に移すことが大切です。

私が最終的に目指していて、みなさんにもぜひ目指してほしいのは、「自分の名前で仕事できる人になること」。フリーランスはもちろん、会社員であっても「資料作成をお願いするなら堤さん」というように信頼される存在になることが理想です。

理想のキャリアプランは?

今日は5ステップの中の「キャリアプランを考える」についてお話ししたいと思います。

キャリアプランを考える要素は3つ。
・Where「どんな形で」…理想を叶える雇用形態を選ぶ
・What「なにを」…実績や経験を棚卸し、好きや興味を深掘り
・When「いつ」…スケジュールを決める

そのうちのWhereですが、主に5つのパターンがあります。
・「続ける」…今の仕事を続ける
・「変える」…他の会社に転職する
・「増やす」…今の仕事を続けながら副業をする
・「創る」…フリーランスになる
・「ずらす」…仕事以外の場所で自己実現する

「増やす」の副業は、手作りアクセサリーをアプリで販売するなど趣味を仕事にするパターンや、私の内向型セミナー・カウンセリングのように商品やサービスをゼロから作るパターン、企業や他者から仕事を請け負うパターンなどがあります。

「創る」のフリーランスは、会社を辞めて新しいことに挑戦する道もありますが、今の仕事を業務委託として受ける方法もあります。出版社に勤めていた知人は、フリーの編集者になって前職の会社から仕事を受けています。

最後の「ずらす」は、ブログを始める、ボランティアに参加するなど。私も以前NPOのボランティアに参加したことがあったのですが、そこで出会った20代の女性が「転職しようと思っていたけど、ボランティアが楽しくて今の仕事の活力になっている」と話していて、そういう道もあるんだなと気づきをもらいました。

どのパターンを選んでもメリットとデメリットがあるので、それをふまえて自分に合いそうなパターンを考えてみましょう。

ワーク&チェックリスト

キャリアプランを考える際は、主観と客観どちらも大事。ワークを通じて主観的に、適性チェックリストを通じて客観的に、それぞれ考えてみてください。


内向型×内向型のプチ対談

内向型のAさんが選んだキャリアプラン

堤:
Twitterで私のことを知り、カウンセリングを経て、3か月かけて働き方を模索する内向型プロジェクトに参加してくれたAさん。今日来ていただいているので、少しお話を聞いてみたいと思います。
まず、相談いただいた当初はどんなことに悩んでいたか、改めて教えてください。

Aさん:
当時も今も結果的に同じ職場でがんばっていますが、不動産会社の事務を4年近くしています。当時は職場の人間関係に悩んでいて、仕事にもやりがいを見出せずにいました。私は上司や先輩とは気兼ねなく話せるのですが、後輩と接するのが苦手。でも離職率が高い会社なので後輩ばかりが増え、苦手な新人教育やマネジメントを任されるようになり、仕事がうまく回らなくなってしまいました…。上司から指摘されることも多く、一時期は退職を考えていました。

堤:
苦手なことをやらなければならないストレスや、うまくできない自分へのもどかしさで悩んでいたんですね。そして副業を始めてみたんですよね?

Aさん:
はい。得意なことや好きなことで収入を得られたらいいなとはずっと思っていました。でも今すぐに転職やフリー転向は現実的ではないので、ゆかりさんに相談してまずは副業で試してみることにしたんです。学生時代に美術が好きだったので、選んだのはアクセサリー作り。副業から始めて、軌道に乗ったらアクセサリー1本でがんばってみたいと考えていました。

堤:
実際にやってみて、売上や感触はどうでしたか?

Aさん:
ハンドメイドアプリで販売したのですが、それはあまり売れませんでした。ただ、知人の飲食店がお祭りに出店した際に商品を置いてもらったら、売上もよく対面販売の楽しさも味わえて。とてもいい体験でした。でも、本業との両立がなかなか難しく、寝る時間を惜しんでまで打ち込めるほどの情熱は正直持てませんでした。人間関係に悩んではいましたが、ひとりで完結させる仕事よりもう少し人と関わる仕事のほうが好きなのかもしれない、と気づいたんです。

堤:
その気づきを経て、現在は仕事とどう向き合っていますか?

Aさん:
今の職場でも、まだがんばる余地はあるのではないかと思い直しました。私はとくに大人数での雑談が苦手だったので、1対1ならなにか変わるのではと考え、通勤中に後輩を見かけたら話しかけるなど小さなことからコツコツやってみることにしました。
また、仕事量が多くていっぱいいっぱいになっていたことも、以前は環境のせいにしてしまっていました。しかし、自分の段取り力をつけたり困ったときは人を頼ったり、苦手なことを克服したいと前向きに考えられるようになりました。

堤:
副業を試してみたことで気づきを得て、今の仕事を継続するという選択をしたんですね。一度選んだキャリアプランは必ずしも正解ではありません。たとえ元の道に戻ってきたとしても、それは「主体的な選択」ですから、すごくいいことだと思います。働き方を考えるいい経験になりましたか?

Aさん:
はい。セミナーでお話を聞いたのもよかったですが、カウンセリングで1対1で話を聞いてもらい、主観と客観できちんとキャリアを考えることができました。今後また別のキャリアプランを選択する可能性もありますが、今はまず目の前のできることをやりたいと思っています。

内向型コミュニティを発足!

今日お話しした5ステップを一緒に進んでいけるよう、内向型コミュニティを発足しました。テーマは「あなたのまま。誰もが誰かの役に立てる」。安心して自分を受け入れ挑戦できる場所、そして内向型のスキルシェアと雇用を生む場所として育てていけたらと思っています。

参加特典としては、オンライングループ交流会、仕事受注・紹介制度、限定イベント、各種イベント・サービスの割引など。私から一方的になにかを伝えるだけでなく、ワークやシェアをオンライン上でやったり、仕事をお試しできる機会をたくさん作ったりしたいと考えています。たとえば今日のカメラマンや、私が出版した電子書籍の表紙イラストは、私のLINEメルマガのフォロワーさんにお願いしました。このように内向型をいかした雇用を多数生み出せるようになるのが理想です。

自分の内向性や強みを理解できる。「お試し」を通じて選択肢を見つけられる。スキルシェアチームの一員になれる。そんなコミュニティに育てながら、私自身も引き続き内向型をいかす働き方を模索していきます。みなさんもぜひ自分と向き合うことを継続してみてください。

(画像提供:iStock.com/undefined undefined)

Orion合同会社代表 堤ゆかり

1985年生まれ。東京都出身。2018年末、生まれて初めて東京を離れ、大好きな街 福岡に移住。10年間働き方に悩み自身の内向性に自信を持てなかった経験を経て、週5在宅で内向型の強みを活かす仕事を実現。
現在は、自然に囲まれながら夫婦でマイペースに暮らしている。「内向型を活かす働き方を叶えるフリーランスを増やす」を目標に、カウンセリング・ビジネスコンサルティングを主催。インスタフォロワー1.2万人超。

【著書】2019年6月に『もう内向型は組織で働かなくていい』を出版。Amazonランキング2カテゴリで最高1位を獲得。

【メディア実績】
・小学館のwebメディア「@DIME」取材
・コミュニティラジオ天神 インタビュー番組出演


サンクチュアリ出版ではほぼ毎日、すごい人を呼んでトークイベントを開催しています。
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